王子様とブーランジェール
それほど広くないこの廊下に、幅を利かせるかのように圧をかけてズラリと並んでいる。
小笠原麗華と愉快な仲間たち、迫力あるな…。
増えた人数のせい?
と、いうか、山田の登場の様子から、小笠原たちは俺とあのゴリラのバトルをずっと見ていて…俺に用事があるんだろう。
みんな俺を見てる。圧を感じるわ…。
その何とも言えない光景を呆然と立ち尽くして眺めていると、またしても小笠原が「オホホホ!」と高笑いを始めた。
通る声なので、どこまでも廊下に響き渡る。
廊下にいる生徒たちの注目を一気に浴びてしまい、恥ずかしくなってしまった。
「…おい、笑うな!何か用か?ただの通りすがりか?」
どっちにしろ、さっさと撤収してくれ。
「オホホホ!通りすがりではございませんわよ夏輝様?本日は、夏輝様にご報告がございまして、参上致しましたのですよ?」
「…報告?」
「ええ!大掛かりな粛正が完了しましたので、そのご報告を!」
「しゅくせい…?」
何のことか意味が解らず、首を傾げていると、小笠原が集団の後方に向かって「あなた達、前にお出でなさい!」と声を張っている。
誰?誰来んの?
後ろの方がもぞもぞと人の頭が動いており、集団を掻き分けてきているようだ。
そして、ズラリと前に出てくる。
(…何っ!)
驚かされるのも、そのはず。
小笠原に呼ばれて俺の前に出てきたのは、四人の女子。
だが…その顔は、忘れられるはずもない。
込み上げてきたのは、驚愕7割、憎しみ…3割。
こいつら…!
嵐さんにガセネタを吹き込まれて、桃李に殴る蹴るの暴行を加えた女子たち…!
出来れば、あまりお会いしたくなかった人達だ。
どうしても、あの時の腹立たしさや、自分の情けなさに対する苛立ち、桃李への申し訳なさとかを思い出してしまう。
その顔を見ると、イラッとさせられる。
なぜ。なぜこいつらがここに?
なぜ、小笠原がこいつらを連れてくるんだ。
だが…彼女たちを目の前にして、少し違和感が。
全員、しずしずと申し訳なさそうな面構えで出てきたのだが。
…あれ?
確か彼女たちは、見た目化粧が濃い目の、嵐さんみたいなお色気十分の派手目な女子たちだったはずだが。
しかし、目の前にいる四人は、確かに本人たちなのだが、メイクはナチュラルになっており、なぜか全員、髪がつやつや。中には髪をぐるぐるに巻いているヤツもいる。
え…系統変え?
まるで、小笠原系だ。
な、何で?