王子様とブーランジェール
そんな系統変え?した女子たちを目の前に違和感を抱えていると、小笠原は扇子をパン!と音を鳴らして閉じる。
「夏輝様。ただいまより、この者たちが夏輝様にお話ししたいことがあるそうですよ?…ね?あなた達?」
「…は、はい!」
話したいこと…?
「はい!」って、随分素直に返事するな。
あれだけガセネタの洗脳に侵されていた時は、あれよこれよと言い訳と正当化のオンパレードだったのに。
なぜか表情もすっきりと背筋が伸びてるのが違和感だ。
ちょっと身構えてしまう。
対するその女子たちは、俺をじっと見つめていて、それが更に警戒心を煽られる。
何を…言われる?
「夏輝様…」
…ん?
『夏輝様』って…?
あんたがたは確か、俺のことを『竜堂くん』と呼んでいたと思ったけど。
なぜ、小笠原たちのように、俺を皇族扱いするような御呼び立てする。
めっちゃ違和感…ゾッとした。
「夏輝様!」
「先日は、大変申し訳ないことを致してすみませんっ!」
「すみませんでした…!」
そう言って、一斉に頭をバッと深く深く下げるあの女子たち…。
え…え?
何が起きてんの?
思わず固まってしまう。
深く下げたその頭は直り、その表情は素直に反省の色丸出しの切なさを漂わせていた。
い、今。この人たち、謝罪したよね?
イジメの実行犯にも関わらず、嵐さんに騙されていたから私達は悪くない!と、言い張っていた連中だったのに…!
自分たちの犯した罪をあれだけ正当化していたのに…!
「夏輝様に不快な思いをさせ、傷付けてしまったことにはもう何の言葉もありません…」
「嫉妬に狂って、あんなことを仕出かした自分たちを、とても恥ずかしく思っております…」
「夏輝様の大事な御方を傷付けるなんて、言語道断、なんて罪深い…!」
「この罪を十字架として背負って、今後は仲間と一緒に夏輝様への愛を貫いていきたいと思っております…」
(………)
その面白おかしげな様子を見て、唖然とする。
なぜか汗がぶわっと出てきた。
この人たち、何言ってんの…?
…いや、俺への謝罪でしょうけど。
内容が一気にハードになっている。
そして、なぜ喋り方がガラッと変わったんだ。
まるで小笠原がそこに四人いるようだ。
すると、その四人の傍に立っていた小笠原が扇子をバッと広げる。
「…ほら、あなた達。そこに神田もいらっしゃいますわよ?」