王子様とブーランジェール
そう言って、少し離れたところに立っていた桃李を扇子で差す。
すると、一目散に「大変ごめんなさい!」「すみませんでした!」「もう二度としません!」と、次々に頭をペコペコと下げ始めた。
「え、ええええ…」
突然の謝罪攻撃に、桃李は一気に挙動不審となり、辺りをキョロキョロとしている。
スーパーパニってるぞ…。
「神田さん、ひどいことして本当にごめんなさい!」
「あなたがパンを作れなくなったら、夏輝様の幸せを奪ってしまうところだったわ!」
「許して!許してください!」
「は、は、はいっ…」
何だ。この状況。
すると、横で小笠原が「オホホホ!」と高笑いを始めた。
また、唐突な…!
「…小笠原!何なんだこれは!」
このワケのわからない混乱ともいえる、カオスな状況に疑問だらけ。
その苛立ちをぶつけるかのように、小笠原に問う。
「オホホホ!…夏輝様、この者たちは、改心されました」
「か、改心?!」
「私達の粛正ともいえる、熱心な指導と教育により、心を入れ替えて生きることとなりました。オホホホ!」
改心?!
粛正?!
指導、教育?
…え?何?
この粛正とやらに至った経緯はわからんが。
要するに…この彼女たちを捕まえて、何らかの指導と教育を施し、改心した…と、言いたいのか?
確かに。
あれだけ嵐さんのガセネタに洗脳されていて、実行犯にも関わらず、頑なに謝罪をしなかったのに。
こんなにペコペコと頭を下げるようになったとは。
指導?教育?
小笠原…おまえ、彼女たちに何をした?
これは、改心というレベルじゃないぞ?
見た目、振る舞い、喋り方、すべてが変わっている…!
まるで、一回死んで生まれ変わり。
小笠原のクローンが四人誕生したようだ。
まさか、ガス室にぶちこんだとか…!
…いやいや。ガス室なんて入ろうものなら、死ぬことは出来るが、生きて帰ることは不可能だ。
どんな教育と指導をした?
と、いうよりも説法?
まるで、宗教のようだ。
小笠原教?
…だなんてことを考えたくなるぐらい、本当にこの状況はカオスだ。
「そういうワケで、夏輝様。昨日の敵は今日の友。この者たちは、これから私達と一緒に苦楽を共にし、夏輝様への愛を貫いていくことになりましたので?悪しからず?」
「は、はぁっ?!」
「お友達が増えて、この上なく楽しいスクールライフですわ!平民の学校、万歳ですわ!オホホホ!」
そんな問題?!