王子様とブーランジェール




桃李、松嶋たちが釣りをしに行ってしまい、独り取り残されてしまった。

今の一件で、ドッと疲れた。

そこら辺にあったベンチに腰かける。



あぁ…何だかな。

最近の俺。

松嶋が現れてから、空回りばかりだ。



桃李も、何であんなに松嶋に懐いているんだよ。

ああいうのが好みなのか?

確かに、松嶋はテンション高めで面白いといっちゃ面白いもんな。

エンターテイナーって感じだもんな。バカだけど。

何だ。そしたら俺も。

『いーやっほーぅっ!桃李、一緒にTを探そうぜ!』

なんてやれば、桃李も懐いてくれんのかな。

いやいや。キャラとして無理があるわ…。

俺にはそんなこと出来ない…。

俺は何の面白みもないヤツなのか…。

顔、見た目だけの男か…。

あぁ…。

桃李を好きな想いに関しては、誰にも負ける気がしない。

でも、ただ好きなだけじゃダメだってことを、この結果が物語っている。



独りで悶々と考えてると、どんどんマイナス思考になっていく。

さっきの悔しさもどこへやら。



「あ、竜堂くん、いたー!」



向こうの方から、女子が手を振ってこっちにやってきた。

同じクラスの柳川だ。隣の席だった。

柳川の他に何人か女子がいる。

みんな揃ってショートパンツ。足出してやがる。

夏だな。

そういや、桃李もさっきショートパンツだったな…。



「竜堂くん、さっきのアレ凄かったねー!筋肉系?」

そう言って、柳川は隣に座ってくる。

反対の隣に知らない女子が座ってきた。

「パルクールやってるとかってホント?超カッコよくない?」

「姉ちゃんの知り合いがサークルに入ってるから混ぜて貰っただけ」

後ろにもいるのか。後ろからも声が聞こえる。

「お姉さんいるの?」

「いる。三人」

「えー!三人も!」

そして、いつの間にか、前にも女子がいた。

「そしたら、服とかも選んでもらったりするの?今日着てるTシャツもデニムもアクセ類もセンス良くない?」

「いやいや。服は自分で選ぶしょ普通。一番上の姉ちゃんはアパレルだから、たまにアドバイスくれるけど」

「竜堂くん好きな飲み物何?」

「無糖のアイスコーヒー」

「…私、買ってきてあげる!」

あっという間にアイスコーヒーが登場した。

「好きな食べ物何ー?」

「クロワッサン。あと肉」

「ピアスカッコいいー」

「格闘技やってるってホント?この間の売店でのこと、私見てたよー!」

「やってる。それほどでもない」

「えー!サッカー部なのに?両方やってるの?」

「サッカーの方が先」



あー。いろいろ話しかけられても、頭に入ってこねー。

めんどくせー。



しばらく女子に話しかけられ続けていたが。

理人たちに遠くから見守られていたとは気付かず。



「げっ…何あの女子の数。軽く10人いるじゃん」

「ハーレム?夏輝、あんだけ囲まれてんのに、至って普通でいるわ…」

「夏輝には姉ちゃん三人いるから、あまり違和感ないんだよ。…写真撮っとこ」





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