王子様とブーランジェール
お互い、軽くハンバーガーにドリンクで時間を潰す。
まあ、しばらくこんなゆっくりなんてしてなかったから、いいか。木元さんとも話したかったし。
「…そういや、神田はいつ終わんの?」
「五時半ぐらいですかね。終わったら連絡してくれるって言ってました」
「しかし、あの神田がねー…ビックリだな」
「…俺だってビックリですよ」
桃李はただいま、学校でお仕事中。
何の?って?
パンを造ってるワケではない。
桃李はなんと。
今月から、生徒会に入ってしまった。
それは、いろいろ経緯がありまして…長くなるのでまたの機会に。
え?桃李が生徒会?大丈夫か?
…と、思ってはいたが。
クラス委員の黒沢さん、後期も継投で、しかも学年総代表という、クラス委員の長となってしまい、準生徒会役員なので。
お友達のりみちゃんと楽しくやれている様子だ。
しかも、俺にもメリットがあって。
生徒会のある日は、一緒に下校出来る。
お互いの帰りを待って…ということが出来るようになったのだ。
彼女と一緒に下校とか、嬉しい…。
桃李が帰宅部のままだったら、絶対叶わないことだ。
…え?
俺と桃李?
ええ、ラブラブのまま彼氏彼女、続いてますけど。
この一ヶ月、いろいろありましたが…。
ホント、いろいろあった。
ナーバスでメンタルやられそうな事件や。
滑稽で腹立たしい事件や。
日々のまったりした平和的な出来事まで。
ホント、いろいろあったんだけど。
でも、どんなことがあっても、桃李が隣にいるのといないのとでは、全然違う。
不安だらけでも、悪くはないなと思える。
そんなことを実感し、乗り越えた日々でもあり。
まあ、平たく言えば。
何だかんだ毎日幸せです、と。
やだ。ノロケだよこれ。
そんなことを考えると、ニヤケてくるわ。
…あぁ、いかん。
ここは先輩の前だぞ。
ニヤケは堪えろ。
「…どした?俯いて」
「いえいえ何でもありません…」
ふぅーと一息ついた時。
フードコートの向こうで「夏輝くーん!」と呼ばれる声が聞こえる。
俺を呼んだ彼女は、こっちに嬉しそうに駆け寄ってきた。
「夏輝くん、夏輝くん、久しぶり!今学校帰り?」
「おう、星月じゃねえか」
俺が昨年まで着ていたクラブチームのジャージを着た、ショートカットの女子。
凜の妹、星月だ。