王子様とブーランジェール
このイオンは俺の地元だから、知り合いにいっぱい遭遇する。
さっきは中村のおばちゃんが化粧品コーナーにいた。
木元さんいるのに、話が長くなると困るから、そそくさと見つからないように逃げてきた。
凜の妹、星月は、中学一年生。
小学生時代は同じ少年団の後輩で。
現在は、星天中に通いながら、俺と凜が昨年まで在籍していたクラブの女子チームにいる。
「星月、これから練習?」
「そうなのー!パンダフルでパン買ったけど飲み物買うの忘れててさー!…そうだ、夏輝くん、この間の決勝見に行ったよー!やっぱすごいよ私の師匠!あの決勝点、ナイスアシスト!しびれたー!」
「おいおい師匠ってか。おまえの兄貴の方が凄いって」
「あ、凜の高校も全国決めたってねー!対戦しちゃうんじゃない?まあ凜はスタンドだけど?」
「あっちは強豪校だしな。…っつーか、送迎バスの時間に間に合わなくなるぞ?」
「…あ!そうだった!…じゃあまたねー!桃李ちゃんによろしくー!ラブラブー!」
そう言って、星月は慌ててイオンを出ていった。
さすがJC、パワーあるな。
…っつーか、星月。
桃李とのこと、誰から聞いた。ラブラブー!って…。
実は凜にはまだ言ってないんだけど。
「可愛い後輩だなー?惚れられてるとか?」
「友達の妹です。惚れられて…というか、さっきの通り、師匠扱いですって。星月とはサッカーの話しかしないし」
神扱いという点では、小笠原たちと似てるかも…いやいや、後輩相手に何てことを言うんだ俺は。
しかし、一息つく間もなく。
次の通りすがり人物が現れる。
だが、その人は…。
「…あれ?木元くん?」
ふと気が付くと。
木元さんの傍に、私服姿の女性が一人立っている。
「え?あ…あぁっ!」
その女性が誰か気付くなり、木元さんはビックリしてバタバタと立ち上がる。
本当に突然でビックリしたようだ。
え。あ…あぁっ!
俺も、ビックリだ。木元さんと同じリアクションを心中でしてしまった。
こ、この人…!
「今、学校帰り?」
「た、た、た、高村さんっ!!」
ゆる巻きヘアの超美人。
カーキのミリタリーショートコートに、ライム色?のタートルネックを着て、ヒョウ柄の膝丈スカートにヒールブーツといった、オシャレな出で立ちの女性だ。
しかし、この人は俺も知ってる人で…。