王子様とブーランジェール



…しかし、こんなオチが待っていたなんて。



想像を遥かに超えている。

マジでびびるわ。




(…あぁ)




秘密の小部屋の壁の落書きの謎もわかった。



まいと…誰だかわかったぞ。

さっきの木元さんの話からして。

だいぶ身近な人間だ。



三橋舞人。昨年までこの高校のサッカー部にいた。

で、隣の月の沢地区に住んでるヤローだ。

俺のサッカー少年団の先輩。俺が三年の時、あっちは六年。小学校は別だったけど。

で、マリアの部下のドラ息子。

で、姉・冬菜の中学校の同級生。冬菜の改造ドローンの餌食になった男。

で、哲太兄ちゃんの友達。



で、俺が今まで見た中で、一番のチャラ男。

キングオブチャラ男。

浮気も納得。




アイツもかなりの超絶イケメンだが、あおこさんがアイツの彼女だったとは。



男見る目ねえな。



じゃ、ないか。




次々と解明された謎に、心臓がバクバクしている。

先代ミスターが女…!

俺の予想と全っ然違ったじゃねえか…。



でも、凄まじいファンクラブを持ったミスターでも浮気されてりゃなぁ…。

…しかし、この一時間後。まさかその二人の騒動に巻き込まれるとは、この時は思わず。



そういや。桃李は、この話知ってんだろうか。



後で会った時に教えてやるか。

かなりビックリじゃね?

近所のお姉さんが、超絶アイドル・先代ミスター。

驚くだろうな?

その驚いた顔、見たいわ。



『えぇー!あおこさんが…!』



なんてな。

楽しみひとつ増えた。








その後、桃李から『お仕事終わりました』のLINEが入る。

速やかに迎えに行くため、木元さんをフードコートに残して学校へと向かう。



…ちょっと寒くなってきたな。

空は今にも雪が降りそうなどんよりとした雲に覆われている。

外はすっかり暗いのに、それでもわかる程。



桃李、外で待ってなきゃいいけど。



正門を通り抜け、正面玄関前にたどり着くが、そこは無人だった。

きっと生徒会室で待ってるか。



中に入ろうと、体をその方向に向けたその時。

正面玄関口のドアがカラカラと開いた。



「おかえり…」



首にぐるぐるとマフラーを巻いてもこっとなった姿の桃李が現れた。

玄関で待ってたのか。



「…おまえ、玄関だって寒いだろ。生徒会室で待っててもよかったんだぞ」

「あ、いいの。そよみセンパイと内緒のお話してたから…」




< 946 / 948 >

この作品をシェア

pagetop