王子様とブーランジェール



このタイミングで出くわしてしまった。

って、人だかりの輪の中にいて、あいつら何やってんの?



松嶋が持っているのは、ダーツの矢だった。

ゲーセンにはダーツボードが3つある。

それを目の前にして、松嶋は矢を持って揺れながらラフに構えていた。



「イッツアショータイム!」



そう叫ぶと、松嶋は次々と矢をボードに向かって投げる。

次々と投げるの早っ!

投げた矢は、3つのボードに次々といい音を鳴らして刺さっていく。



「イェースっ!全弾命中っ!」



矢がそれぞれ3つずつ。3つのボードに刺さっている。

全部、ど真ん中…!

嘘っ!



『おぉーっ!』と、拍手と歓声が沸き上がる。

マジか、すげえ!

全てこぼすことなく、ど真ん中!




「お次、行きますよー!」



ボードから矢を外した松嶋。

今度は矢を4本。

指の間に挟んで持っている。

まるで、殺し屋のナイフのように。



「チェーストぉーっ!」



そう叫んで、矢を放る。

今回も次々と、三度放っていた。

ザクザクっと刺さる大きな音が鳴った。

素人がたてる音じゃない!



放った矢は、またしても各ボード、ど真ん中に命中している。

えっ…こんなのある?!

3つとも、全部、ど真ん中に4本!

先程よりも、拍手と歓声が大きくなった。



「ど真ん中以外当たる気がしないぜぇーい!」



松嶋はガッツポーズをしている。

隣で桃李が、「すごいすごい!」と、手をパチパチ叩いていた。

いや、凄いよ。

俺も今、不覚にも。

ちょっとカッコいいと思ってしまった…。

思ってもうた…!



「…さぁーて!これが最後!よく見といておくれやす!」




刺さった矢を全て回収し、箱にひとつにまとめている。

その箱を小脇に抱え、矢をひとつ手に持った。

そして、中央のボードの前に立つ。



今度は何をするんだ?



「…ラーブアーンドピース!!」



そう叫んで、松嶋は中央のボードに向かって、次々と矢を投げつづける。

そのスピードは、尋常ではない。

次々さっさと投げており、次々と勢いよく矢がボードにささる。

適当に投げてんのかな?と思いきや。

実は適当ではなく。

矢が刺さっていくに連れて、そのカタチが浮き上がる。

マジか!



『嘘っ!』

『凄いよ!』

歓声が更に上がり、辺りは騒然としていた。



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