先生。





先生がいなくなって、数週間が経った。


季節は変わり、もうすぐ夏休みを迎える。





「くれぐれも、問題は起こさないように。それと…」





先生はここにいなくて、なんとも言えない空虚感が私を襲った。



家も、この学校も…


どこにいても どこを見ても、たくさんの思い出で溢れている。



まるで俺を忘れるなって…言ってるみたいに。


気付けば私の人生は全て先生が占めていた。





「それと、夏目と立花は残るように」


「はあー?くそだりぃー」





先生に呼ばれる名前と、副担任に呼ばれる名前とでは、全然違う。


感情も何もない。



日に日に、色が薄れていくのがわかる。


目を擦っても擦っても、空とか地面とか、周りの風景すらも薄れていく。



周りの色と比例するみたいに、私の心までも色落ちが進んでいくんだ。

< 352 / 399 >

この作品をシェア

pagetop