先生。
心ではイライラしても、表に出すのがめんどくさくなる。
そしたら、何も言わない私に、男はまたフッと笑った。
無視だ。
時間の無駄。
あの男を無視して、久しぶりに家に帰ってきたけど、もちろん誰もいない。
…と、思ったのに。
「あれ、あんた帰ってきたの?」
きっと私がタバコを吸う人が嫌いな原因は、この女にある。
「話しかけないで」
もう、母親とすら呼びたくもない。
「あら、怖ーい!誰に似たのかしら?」
17歳で私のこと産んで、相手には逃げられたらしい。
だから私は、父親の顔を知らない。
まだ遊びたい盛りに自由を奪われた可哀想な女。
あ…そういえば私も今17歳だっけ。
「私出かけるから」
「あっそ」
興味もない言葉をそう言い払うと、階段まで追いかけてくる。