先生。
ガラガラっと扉が開いて、たまたま顔を見た瞬間、私は大きく後悔した。
「津山 譲(ツヤマ ジョウ)です。よろしくお願いします」
…最悪だ。
今朝の喫煙野郎じゃん。
今朝見た冷たい顔ではなく、ニコニコ営業スマイルを振りまく男は、クラスの女子に騒がれる。
…ああ、こういうやつが1番嫌い。
顔も見たくないし、同じ空間にいることも嫌になる。
もう、サボってしまおう…
チャイムが鳴って教室を出れば、立ち入り禁止とボロボロの文字で書かれたプレートを目指して歩いた。
それを無視して進めば、誰にも邪魔されない私だけの世界が広がる。
ここだけが私の居場所だった。
それなのに…
「あ、不良女」
口にタバコくわえたあの男が、何故かここにいる。