星の向こうできみを待っている。


「お兄ちゃん……。あたし、死にたくないよ……っ」


死ぬことを怖いと感じてこなかったのは、あたしが生きたいと思わなかったから。だけど、生きたいと思うだけで、こんなにも死ぬことが怖くなるんだ。


今まで生まれてこなかった感情が、今、ようやく生まれた。

これが、自分の死と向き合うってことなんだ。




「大丈夫。希愛はこれかも生きる。ドナーだって絶対に見つかる」


「でも…。もしも見つからなかったら、あたしは…「死なない!」」


お兄ちゃんは、あたしの言葉を遮った。

その声は力強いのに震えていて、強さと弱さが混ざり合った声だった。



「絶対大丈夫だ…」


握られた左手に伝わる温もりは全くと言っていいほどない。

大きな冷たい手。

声だけじゃなく、手まで震えていた。
< 167 / 397 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop