星の向こうできみを待っている。
フードを被ったグレーのパーカーに、ジャージのズボンというラフな格好。顔はマスクをしているせいでよく見えなかったけど、長い前髪の向こうに見える切れ長の目。
彼の姿を見た瞬間、心臓が大きく脈打った。
それと同時に目頭が急激に熱くなり、体の底からなにかが込み上げてくる感覚に襲われた。
体が小さく何度も震える。
あぁ、夢じゃない…。
今、目の前にいるのは、あたしがずっと会いたかった人だ。
「ずっと、会いたかった…」
感情より先に体が動いた。
彼のもとに駆け寄り、力いっぱい抱きしめると、柔軟剤の優しくて甘い香りがした。抱きしめ合うたびにした、柑橘系の慣れた匂いじゃない。
それでも、この感覚は間違いなく彼のもの。