星の向こうできみを待っている。

フードを被ったグレーのパーカーに、ジャージのズボンというラフな格好。顔はマスクをしているせいでよく見えなかったけど、長い前髪の向こうに見える切れ長の目。


彼の姿を見た瞬間、心臓が大きく脈打った。


それと同時に目頭が急激に熱くなり、体の底からなにかが込み上げてくる感覚に襲われた。

体が小さく何度も震える。

あぁ、夢じゃない…。

今、目の前にいるのは、あたしがずっと会いたかった人だ。



「ずっと、会いたかった…」



感情より先に体が動いた。

彼のもとに駆け寄り、力いっぱい抱きしめると、柔軟剤の優しくて甘い香りがした。抱きしめ合うたびにした、柑橘系の慣れた匂いじゃない。

それでも、この感覚は間違いなく彼のもの。
< 275 / 397 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop