恋する剣士
月日が流れ

わたくしと昴は、御所の中なら良いと
離れからの外出を許された

「少し、散歩をしないか?」

久しぶりに話し掛けてくれた
あぁ、嬉しいとは、こういう感情なんだ

心とは、反対に俯き首を横に数回振った


「ごめんなさい」


見飽きた景色でも、季節の移ろいは見て取れた

空っぽのわたくしには、それで良かった

動かなくなり、食欲も落ち
体力がなくなった


「アキラ!少しでいいから!食え!!!」



高熱が続き、水を飲むことも面倒だ

それでも、外を眺め続けた

昴と暮らしはじめて、何年かして
初めて布団に寝かされた

離れから他の部屋に移されたのだ

その日から、起き上がれなくなった




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