恋する剣士
床に伏せて、どれくらいたっただろう
久しぶりに体調が良かった

「何か、口にしたいものはないか?」


兄が見舞いに来た



静かに首を振る




兄…

記憶にある兄と違い

父と見紛う容姿

父とは、違い優しいこの人は
外のことを知らない
知ろうとすることもなかっただろう

外が豊かだと聞けば、そう信じ
人々が幸せだと聞けば、疑うこともない


昴と御所に戻った時以来に顔を合わせる

兄をジッとみつめる


「どうした?」

「父上に良く似ておいでですね」

「覚えておるのか?」

「ええ」



兄は、神妙な面持ちで何かを言おうとしていた



おそらく、良くないことだろう






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