嫌いの反対
「咲良」
…聞こえ、
私の体は別の方向へ傾く。
フワリと鼻を掠めた私と同じ香り。
波留多に抱きしめられてるのだと、時間をかけなくても分かった。
「お願いだから、咲良に戻って……」
涙に混じったその声は私の殺気を消すのに充分な要素で。
「波留、多……?」
弱々しく、返した。
それと同時に痛みだす全身。
朦朧としていく意識。
「咲良!!!!」
最後に残った波留多の声は今までにないくらい焦って聞こえて。
それが少しおかしかったのかニコリとしながら意識を手放した。