嫌いの反対
もう一度繰り返される鈍い音。
ドス、とかバキ、とか。
もう祐亮1人では耐えられないくらいらしい。
「くたばれよ嬢さん」
「何言ってるのよ、どんだけ教え込まれたと思ってるの」
そういう友梨は息が乱れているがブレることはなかった。
祐亮が「ったく」と呟いてフラリと体の体勢を傾けさせた。
あ、倒れる…。
その隙をついて友梨は蹴りを回そうとする。
「おい、何してんだ」
パシッとその蹴りを掴んだのは
「勇太…」
「何してんだよ兄貴」
勇太はその蹴りを投げ捨てるようにすると、友梨に向き合いながら吐き捨てる。
「弱ってる奴に手出すんじゃねえよ詐欺師」
さ、詐欺師……!?!?
「俺は弱ってねえ」
「言ってろクソ野朗」
何気に酷いことをサラサラ言う勇太からは殺気がダダ漏れで初めて見る姿に私も息を飲んだ。