嫌いの反対
「ありがとう」
私はフッと笑うとそう言い放つ。
「んじゃ、おやすみ」
「まった波留多」
去っていこうとする背中を今度は私が止める。
「波留多。ありがとうね、本当」
波留多は目を丸くした後、切なげに目を伏せながら
「んなもん屁でもねえよ」
とニカッて笑って去る。
その一瞬の表情に胸が痛んだ。
そうだよね、誰かに裏切られてここにいるんだ。
私たちはそれを忘れちゃいけない。
私はいつのまにか波留多と同じように切なげに瞳を揺らして、何時のまにか寝ていた。