ホワイトデーお返し調整会議【男子達の関が原】
 「なるほど、、、ケンちゃんのも一理あるね。」

 小早川ケンタを「ケンちゃん」と呼ぶのは職場ではおトヨのみである。時々前田課長が宴席で「おい、ケンチャナヨ」※1と小早川ケンタに呼びかけることがあるが、これはハングルをちょっと知っているゾと韓流好きの女子にアピールするためである。決して小早川への親しさからではない。

※1 韓国語で「気にすんな」の意

 それはさておき、その後、本田次長は完全に黙りこんだ。それは新人に言い返されたことが、バツが悪かったという以上に、今後、この新人をどのように扱ってやろうかということに関心事が移ったからである。執拗な男は常に思考を止めないのである。

 いずれにしても本田次長を除くすべての会議参加者が松平決裁を求めることに同意した。

 「では如何にして松平部長と連絡をとり申す?」

 と、石田係長が皆に問うた時、突然、古いアメリカンポップス、YOU ARE MY SUNSHINEが小会議室に鳴り響いた。猪武者、福島課長の表情がにわかに変貌した。
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