ホワイトデーお返し調整会議【男子達の関が原】
この状況において松平部長に報告と決裁を仰ぐのは、中立の立場の者がふさわしい。というのが、一方の派閥の者が使者となれば、自派に都合のいい報告を行い、松平部長を自分達にとって都合のいい結論に導くことが考えられるからだ。組織の長が下す結論は、報告者によって既に決している場合がままある。

 だからと言って、二派から一人づつ人を出すというのも、険悪になった雰囲気からは中々難しい。そうなると中立の立場にある三人、すなわち前田課長と新人の小早川ケンタ、そして後から会議に加わった本田次長の中から使者を選ぶことになるのだが、子どものように拗ねてしまい、手遊びばかりしている前田課長にこの大事を頼むことできない。

 また、重要な役割とは言え本田次長に使い走りをさせるわけにもいかなかないので、必然的に小早川ケンタにそのお鉢が回ってきた。

 「では、小早川殿、おぬしが部長の所に行ってくれるな。」

と、上杉係長が怒ったように言った。この御仁は基本的に気が短い。

 「はい。あ、でも僕、部長が今どこにおられるか分からないンですよぉ。」

たしかに新人、小早川ケンタが部長のアフター5の行動を知る由もない。

 「きっと飲みに行ってるか、」

福島課長の携帯は未だブルブルと奮えている。

 「自宅に連絡するわけにもいきませんしなあ!」

と、石田係長はニヤニヤしながら大きな声で福島課長の発言を遮(さえぎ)った。
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