ホワイトデーお返し調整会議【男子達の関が原】
「疾きこと風のごとし」戦国時代の名将武田信玄が傾倒した、中国の【孫子】の言葉であるが、何事もスピードが大事なのである。勝者は常に早く、そして抜け駆け野郎だ。部下の女子社員の前で鼻を長くしている手の早いこの初老の男こそ、ビジネスの、否、人生の最終勝利者なのである。誰がリクエストしたのだろう、スナック「ゴリラ★チョップ」には、上司と女子社員の定番、「銀座の恋の物語」が流れてきた。

 「世の中、少しもよくなってないじゃないか、、、」

 小早川ケンタの泣き出しそうになりながらうめいたが、その小さな嗚咽は、やけにしっとりとした、おトヨのカラオケ用の声にかき消されていった。

 「心のぉ~奥までぇ~♪・・・」

 この平成某年3月13日夜の出来事は、「仮名手本・ホワイトデーお返し蔵」という名で、現在でも歌舞伎や浄瑠璃の人気の演目として受け継がれ、今日に小早川ら男子達の悲劇を伝えている。(了)
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