絵本王子と年上の私




 夜も深くなり、空腹を感じ始めたふたりは、ソファに並んで座り、買ってきた夕食を食べ始めた。白おすすめのワインはとても飲みやすく、甘いお酒が好きなしずくにぴったりで、ついつい飲みすすめたくなるものだった。
 食事をとりながら、テレビを見たり白の家にある本を眺めながら、ゆったりとした時間を2人きりで過ごしていた。
 
 「この絵もいいですよね。しずくさんはこのイラストレーターさんのゲーム好きでしたよね?」
 「うん。好きだよー。、、、綺麗だよね、、、。」
 「どれが好きですか?」
 「んー、どれかなぁ、、?」
 「、、、しずくさん、僕の事好きですか?」
 「好きー、、、。」

 しずくは、ふわふわした状態のまま返事をしており、自分が何を言ったのが、よくわからなくなってきた。

 「しずくさん、眠そうですね。」
 「、、、うん。」

 昨日の夜は楽しみで寝れなかったし、朝も美冬がヘアセットをしてくれたため早起きをしていた。大学祭デートでも色々なことがあったし、歩いた距離を多かったため、疲れてしまったのかもしれない。

 頭は冷静に分析できているのに、ボーッとしてしまうのはお酒のせいなのだろう。

 同じぐらいの量を飲んでいたはずの白は全く酔っていないようで、いつもと同じ表情だった。年上の自分が先に酔ってしまうのは少しだけ悔しかった。 
 「お風呂沸いているので、どうぞ。着替えは僕のものしかないですが、準備しておくので。」
 「うん、、。でも、眠い、、、。」

 起き上がろうとしても、眠すぎて力が抜けてしまって、体が傾いてしまう。白の体に寄りかかるように倒れてしまう。
 「あ、ごめんなさい、、、。」
 「っ、、、いえ、、。お風呂入ってから寝ましょう、ね?」

 白は焦った様子で、しずくを元の場所に戻し、お風呂に行くように促し続けた。
 
 「ごめんね。緊張してたはずなのに、こんなになっちゃって、、。」
 「大丈夫ですよ。しずくさん、疲れていたんですよ。あ、僕のシャンプーとかも使ってくださいね。メイクとかは、、、。」
 「あ、大丈夫ー!もしかして泊まるかなって思って持ってきてるからー。」
 
 そう言って案内されたお風呂場をしずくは借りることにしたのだった。部屋出た後、「反則すぎますよ、、、本当に。」と顔を赤らめて呟いた白の言葉は、しずくには聞こえなかった。



 お風呂から上がる頃には、しずくは眠気はあるものの酔いは覚めてきており、先程の会話を思い出しては恥ずかしくなってしまった。

 それに、今さらながら素っぴんを見せるのも恥ずかしいし、彼の服を着て白に見られるのも照れてしまう。それでも、泊まる準備までして楽しみにしていた事がバレたのが、1番恥ずかしい事なのだけれど、それも仕方がない事だった。

 美冬おすすめの寝る前に付けてもいい、お粉をポンポンと顔に馴染ませる。効果はよくわからないけれど、すっぴんよりも肌は綺麗に見えるはずだった。普通の女の子のように、彼氏の前では少しでも可愛くなりたいと思うのは、しずくも同じ。鏡で何度かチェックして、お風呂場を出た。

 「お風呂とお洋服とか、ありがとうございました。」
 「いいえ。僕もお風呂入ってきますね。しずくさんは寝室のベッド使ってくださいね。」
 

 そういうと、白はすぐにお風呂場に行ってしまった。言葉の意味を考えながら、トボトボと寝室に向かう。白が準備してくれてシャツタイプのパジャマは、少し大きめだったけれど、身長が高めのしずくは、シャツでワンピースのようにはならなかった。
そういう、彼シャツワンピに憧れたこともあったが、もうそれは無理だとわかっていた。それでもズボンは長めで裾を少しだけ折ってはいていた。裾を引きずらないに気を付けながら歩く。

 寝室は、大きめなベットがありしっかりと整えられている。茶色と緑色のアースカラーのベットカバーが白に似合ってるような気がした。
 ベットで寝て待つのは恥ずかしかったので、ちょこんとベットの端に座ってみる。すると、目の前の本棚に白の絵本が数冊並べられていた。
 それを取りベットに座りながら眺める。仕事でもよく見る絵本だったけれど、これからは白を思って家でも見てしまうような気がした。
 
 「白は一緒に寝るつもりないのかなぁ、、、。年上過ぎて魅力ないとか、、、?」

 そんなことを呟きながら、少し心配になってしまう。何でも言ってくださいと言われても恥ずかしいことはなかなか女からは言えないものだった。

 パラパラとページを捲るうちに、しずくはまた激しい眠気に襲われた。それでも、白が来るのを待とうと思ったけれど、気づくと絵本を手にしたままベットに倒れ込んでしまう。
 ベットからは、ぎゅーっと抱き締めてくれる時感じる白の香りがして、ドキドキしながらも安心して、瞼がもっと重くなってしまい、しずくはすぐに夢の世界へと意識を移動させてしまったのだった。




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