絵本王子と年上の私
買い物も終わり、白はしずくの家まで車で送ってくれた。車内でも、いつもと変わらず優しく話しをしてくれる。ちょっとした沈黙もいつもなら、ドキドキするだけだった。けれど、今日は何かが違うのだ。空気感というか、雰囲気だろうか?
何が違うと、はっきりとはわからなかったが、白は何かを迷っているようだった。
モヤモヤした気持ちのまま、白とわかれてしまっていいのかと思い、しずくは思いきって彼に話を切り出した。
「白くん。もしかして、文化祭の日って何かあった?」
しずくがそう声をかけると、びっくりし目を広げて白はしずくを見つめていた。だが、すぐにいつも白に戻り、「大丈夫ですよ。その日は仕事もありません。」と返事をした。
別件ではない。そうなると、思い当たることはひとつだ。
「じゃあ、大学にあまり行きたくなかった?」
「、、、そんな事はありませんよ。」
ちょっとした間と、彼の視線が揺れたのがわかった。何か大学であるのかもしれない。
彼が動揺する姿をみて、直感的にしずくはそう感じた。
白の母校である大学の文化祭にいってみたい、という気持ちもある。だが、彼はあまり乗り気ではないようだ。
いきたくないところに行っても、彼は嬉しくないだろう。そう思うと、白に無理をさせたくないという気持ちが勝る。
「あのね、やっぱり来週末はおうちでゆっくりしたいかなーって。仕事忙しいから、持ち帰りの仕事もあると思うし。」
そう彼に伝える。理由は話したくないなら言わなくてもいい。白と二人でいれるなら、大学に行かなくてもいいのだ。
白と一緒に居たいだけ。
すると、白はなぜか息を軽く吐いて、しずくの頭をポンポンっと軽く撫でるように叩いた。
「心配してくれて、ありがとうございます。でも、大丈夫です。大学祭行きましょう。」
白はそう言ってくれた。
先程と同じように、少しだけ苦い顔で。
しずくは、その表情が気になって仕方がなかった。