絵本王子と年上の私



 「すみません!お待たせしました。」
 「それはいいんだけど。大丈夫だった?何かトラブル?」
 「えっと、、、その、トラブルというか急な仕事の依頼というかで。あの、しずくさんに謝らなきゃいけないことがあります。」
 「え?どうしたの?」
 
 そう聞くと、白自身の方が悲しんでるような顔をしながら、説明を始めた。
 
 「実は大学祭の日に午前中に予定が入ってしまいまして。なので、午後からでも大丈夫ですか?」
 「うん、それは大丈夫だけど、、、忙しいなら無理しなくていいよ?」
 「いえ!!デートしたいのは僕なので。午後からはしずくさんに会いたいです。」
 
 「ダメでしょうか?」と切ない顔で白にそう言われてしまうと、何故かこちらまで悲しくなってしまう。白とのデートを楽しみにしていたのはしずくも同じだったので、会う時間が短くなるのは正直残念な事だった。でも、その日会えないわけじゃないと、ポジティブに考えるようにするしかない。
 
 「じゃあ、午後はたくさん楽しもうね。」
 「はい!沢山甘えてくださいね。」

 年下の白に、そう言われてしまうのは少し恥ずかしいが甘えられるのは嬉しい。
 ずっと手を繋いだり、いろんなお店を二人で見て回ったり、白の思いで話を聞きたいな、と週末のデートに来たいが高まった。
 そんなことを考えていたせいで、しずくは今日の重大な作戦をすっかりと忘れてしまっていた。

 「それで、週末の仕事の準備をしなくちゃいけなくなったので、、、今日は帰ります。本当はおうちに行きたかったのですが、、、今日は寝ないで頑張るので、明日また迎えにいきます!」

 それを思い出した頃には、持ってくれていたバックをしずくに渡して、手を振りながら走り去っていく白が遠くに行ってしまっていた。

 「はぁー。今日も聞けなかった。タイミング悪いなぁ、、、。」

 ため息をつきながら、そう一人呟く。
 やけに重たく感じるバックを持ちながら、しずくはとぼとぼと自宅へと足を早めた。



 それから毎日忙しそうにしている白に、「おうちに遊びに行きたいな。」とは言えずに、あっという間に週末になってしまったのだった。


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