星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

 先生が差し出したメモにはメアドと電話番号が書かれていた。


「先生、これ…」

「休みの間分からないことがあったらいつでも訊いて。メールだから時間とかも気にしなくていいからさ。メールじゃ難しいことなら電話してくれていいし」


 私は遠慮がちにそのメモを受け取る。


 好きな人のメアドとか…

 嬉し過ぎる!
 嬉しくて、嬉し過ぎて、上手い言葉が見つからないくらい。


 でも…


「…先生、いいの?生徒に個人情報とか」

「お前にだけだし」

「それ、余計まずいんじゃない?」

「…まずいかな?」


 先生は顎に手を当てて端正な顔をきゅっとしかめ、

「岩瀬先生にバレたらまた怒られちゃうかなぁ…」

なんてぶつぶつ言っている。


 そんな先生が可愛らしくてつい、

「先生可愛い」

と笑ってしまう。


「そういう言い方するなって」

 先生が不機嫌そうに眉を寄せる。


「中学生だって言ってるもん」

 私が反論する。


「中学生はいいんだよ」

「なんで?」


 私がその不服げな先生の顔を覗き込むと、先生は反射的に眼を逸らした。


「…言っても良いヤツと悪いヤツがいるだろう?」

「何それ。私、言ったら悪いヤツなんだ?」


 わざと唇を尖らせてみせる。


「いや、そういう意味じゃ…」

「じゃどういう意味?」


 今度は膨れっ面をしてみせる。

 もちろん本気じゃない。先生を困らせてみたいだけ。


 先生は次の言葉を探すみたいに、柔らかそうな髪をくしゃくしゃと掻いている。
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