星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
先生の指導の甲斐あって、件の問題は無事解けた。
その後も私は先生に教えてもらいながら着々と問題集を進めていく。
「んー…疲れたー!ちょっと休憩」
私は椅子に座ったまま伸びをする。
「お疲れ」
私の向かいで頬杖を突く先生がにっこり微笑む。
気付くともう5時で、店内も学校帰りの高校生でいっぱいになっている。
お喋り好きなのは女の子ばかりでなく、男子生徒も大勢いる。
先生と私の隣のテーブルも近隣の高校の制服を着た男の子達に占拠されていた。
「あ!ねぇ先生、文化祭どうだった?」
私はふと思い立って訊ねてみた。
「ん?」
「先生うちの文化祭初めて見たでしょ?どんな感じだった?」
テーブルの上に腕組みしてずいと身を乗り出す。
「え…えっと、あ…あぁ…面白かった、よ?」
「何それ?全然面白くなさそう」
私はちょっと首を傾げて、眼を逸らしている先生の顔を下から覗き込むように見る。
「あのね、文化祭の一番人気は毎年演劇部のミュージカルなんだよ。うちの演劇部はコンクールでも…」
「南条」
先生が遮る。
「今日はマフラー、持ってないの?」
「マフラー?」
私は首を振る。
「来る時あったかいから持ってこなかった。なんで?」
「……」
「?」
先生が困ったように眉を寄せて答えないのを不思議に思って更に身を乗り出す。
「あっ!…ちょ、ま…」