星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「先生」


 私は真っ直ぐ先生を見た。


「先生やっぱり私、妹でいたいな」

「え…?」

「だって先生と私が『先生』と『生徒』なだけだったら、私が卒業しちゃったら先生と私を繋ぐもの何にもなくなっちゃうもん」

「……」

「妹じゃなかったら一緒にいられる未来なんて…なくなっちゃうもん」


「……

 そっか、そうだな」


 栗色の前髪の影に先生の瞳が細められた。


 好きだから、だから…

 一番簡単に一緒にいられる未来を選ぶ。

 それはきっと、賢い方法だよね?─


「ここまで来たらひとりで帰れる?」

「うん。家、もう見えてるし」

「ん」


 先生の唇が小さく微笑む。


 晩秋の夕暮れは早く、辺りはすっかり仄暗い。
 暗さが別れの切なさを際立たせる。


「じゃ、また学校でね」

「あぁ」


 先生に小さく手を振り、背を向け歩き出す。



「南条!」


 半ばまで歩いたところで、私を見送っていた先生の声が追い掛けてくる。

 振り返ると先生が声を張って言った。


「また準備室で待ってるから!」


 私はできる限りの一番の笑顔で大きく頷く。


(当たり前じゃん。私、妹だもん…)


 失くしたくない。

 だから、これからも先生に逢いに行くよ?


 遠い未来も、ずっと─


       *   *   *
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