星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
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Date: 201x 11/xx 17:48
From: Subaru Hatsuhara
〈xxx_pleiadesxx1212@……〉
Sub: メアド変えました。
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「!!」
先生に促されてスマホに届いたメールを見た私は言葉を失う。
なぜなら新しいメアドの数字は
私の誕生日だったから─
「先生、これ…」
「これなら乗っ取りに遭わないな」
「遭わないけどさ…」
ディスプレイを見つめたまま凍りついていると、先生が
「ふふっ」
と小さく笑った。
「南条はさ、メールの返信いつも早いのな」
「え?あ、そうかな?」
「スマホばっか見てんじゃないの?ちゃんと勉強してる?」
「し、してるよっ!」
そりゃ、先生のメール、待ち遠しくてスマホばっかり気にしてるけど。
「せっ、先生だって。メール、秒でレス来てたもん!」
「そりゃお前、待っ…」
言いかけて先生がフリーズする。
「ま?」
「…あぁ、なんだ?まぁ…休みだからな」
先生の頬が幽かに強ばった気がした。
「?…うん」
「次!後聞きたいことは何だ?」
先生が先を急かす。
無理矢理話を変えられた気もするけど…
「あ、後はね、一番悩んでることで…
今私数学が伸び悩んでて塾に行こうかと思ってるんだ」
「数学か…」
「うん。国大の入試に要るの。
でね。数学だけ受講するのがいいか、どうせならセットで3教科受けるのがいいか迷ってて…」
私は机に頬杖を突いて先生を見上げる。
「あぁ…塾は巧いこと入試に必要な知恵をピンポイントで授けてくれるからね。やれるならやっても良いとは思うけど…
でもどうしても今までの倍忙しくなるから。
帰りも遅くなるし、体力的にきつかったら俺ならやらないな」
「そっか…じゃあ数学だけにする」
私は先生ににっこり微笑む。
「いいのか?俺の意見で決めて」
「いいの。だって先生が一番信頼できるもん!」
「……」
先生は急に黙って私をじっと見る。
見つめる先生の鳶色の瞳は表情がなくて先生が何を思っているのか分からない。
ふと先生は頬を弛め、言う。
「お前が思ってるより俺は狡いぞ?」
「?また訳分かんないこと言うー。こないだだって…」
『俺はそんなの…嫌だから』
って、どういう意味?─
ふと過ったけれど、止めておく。