星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
そこで不意に南条が言った。
「でもホントは見た目と裏腹に頼れる男だったりするでしょ?」
(え…?)
「外国人さんに声掛けられて困ってる女子高生を黙って見過ごせない、そんな人…じゃないですか?」
視線が宙を泳ぐ。
蘇る記憶。
春の朝の駅のコンコース。
「あー…はいはい…春休みのアレ…君か。南条さんだったのか」
オーストラリア訛りに応えようと奮闘する黒髪少女に再会するとは思わなかった。
「南条さんは『いいな』と思った。」
もっと日本の子供は外国語に恐怖心を持たなくなったらいい。そう思ってきた。
逃げずに相手の言うことを理解してあげたいと思うこと。
分かんなくても一生懸命聞いてあげたいと思うこと。
そういうのが大事だと思ってきた。
南条にはそういうマインドがある。あの時俺にはそう感じた。
こういう子が、この子が、俺の生徒として再会できてよかった。
それと。
俺のことを『可愛い』呼ばわりするだけじゃなくて、
『ホントは見た目と裏腹に頼れる男』
と言われたこと。
単純だけどきっと俺はこの時、自分のやってきたことを認められたみたいで、実はちょっと嬉しかったんだ─
* * *