星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
それから南条は部活の度に準備室に顔を出して声を掛けてくれるようになった。
俺もまた南条が英語教室で宿題なんかやっている時には気に掛けるようになった。
そんなことが1ヶ月くらい続き、期末試験を終えると学校はいよいよ夏休みを迎えた。
海外在住時代、俺はラクロスをやっていたことがあって、ラクロスはないにしろ、いずれはここでも運動部の顧問をしてみたいと思っていた。
そんな話をしていたからか、夏休み前、宇都宮先生が自身が顧問している映研の合宿に見学かたがた来てみないかと誘ってくれていた。
夏休みは日々の雑用に追われることなく、普段出来ないことを手広く勉強と思ってやってみたいと思っていたので、俺は二つ返事で参加することにした。
その合宿が夏休みの早々にあった。
合宿では俺は特にこれと言ってすることがあるわけではないが、宇都宮先生を手伝って部員の撮影に同行して危険がないよう監督するのが主だった。
いつもは中学生の授業を担当している俺が珍しくいるので、高校生達は面白がって絡んでくれた。
合宿2日目の晩。
花火大会をすると言って、夕食の後宿舎の庭に生徒達が集まった。
俺はあくまでも裏方なので、はしゃぐ彼女らを遠巻きに見ていた。
(あれ?)
皆が花火に興じる庭でひとところだけ昼のように明るんでいた。
光に釣られるように近付くと、そこにいたのは南条だった。
南条の指の先で花火の白い閃光が瞬き、目映い光に映し出された彼女はとても美しく見えた。
彼女の黒い瞳がキラキラと揺らめいている。
「綺麗だね」
声を掛けると南条が顔を上げた。
閃きを一身に浴びて瞳に光を宿して佇む彼女は本当に綺麗で、この空間が夢の中にいるようだと思った。