星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
やがて彼女を照らす光の花は緩やかにその生を終え、花弁を振り落とす。
ほんの刹那の静寂と共に闇が訪れる。
南条が俺に訊ねる。
「先生もやる?」
「いや、今向こうで打ち上げ並べようと思ってんだ」
「私も手伝うよ」
大した手間でもないので俺は断ったが、
「二人でやるともっと早いから」
と言って南条は楽しそうに俺の先に立って庭の隅に向かって行った。
「一番派手なの最後にしてさ、打ち上げ花火、盛り上げようよ!」
なんて、ポニーテールに束ねた髪をくるんと振れさせて振り返った南条が眼をきらきらさせて提案する。
なるほど。そういう演出とかも悪くないな。
「どれが派手かとか分かんなくない?
ほら、ここに時間は書いてあるから、長めなのを後に集めて一斉に火付けたらどうかな?」
「あ、面白いかも!じゃそれやろう!」
南条と俺は打ち上げ花火をひとつひとつ手に取りながら、どんな風にしようか話しながら花火を並べた。
「先生、こっちの方がいいよ!」
蝋燭の灯りの中で南条は満面の笑みを浮かべ、俺を振り仰ぐ。
初めて逢った時より、準備室で再会した時より、今夜の南条は遥かに晴々としている。
実のところ、逢う度にいつも気になっていた。
南条は若々しい輝きを纏う半面、時々どこか大人びた冷めた憂いのようなものを感じることがあった。
再会した時の挑発的な物言いとかがそうだ。
でも今夜の彼女はいきいきとして、青春の輝きを惜しみ無く放っていた。
そして、彼女の放つ煌めきのシャワーを浴びたように、俺もまた今は自身が輝いているように感じた。
最高の演出を考えながら南条と花火を準備するのは本当に楽しかった。いつしか俺は暑ささえも忘れて作業に没頭していた。
ここ数ヶ月のうちで俺はこんなに楽しいと思えたことはなかったと思う。そのくらい久々に心から笑った。