星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「相手の言うこと、理解してあげようとしてたでしょ?

 分かんなくても一生懸命聞いてあげる、そういうのが俺、大事だと思ってるわけよ?」


(…ん?)


「英語で困ってる人いろいろ見てきたけど、そういう感覚は意外と誰でも持ってる訳じゃないから。

 だから南条さんのことは『いいな』と思ったんだ」


 その『いいな』…?


(やだ、私今何期待した…?)

 一瞬の浅はかな妄想に恥ずかしくなる。

 それとも敢えてのこういう言い方をしてるのか?


 先生は私の動揺を知ってか知らずか続ける。


「逆に、聞くのとか喋るのとかは、後から全然勉強出来るからね。
 だから今は答えてあげられなかったことは気にしなくていい。それはさ…」


 先生は一度言葉を切り、私をもう一度その水晶が煌めく鳶色の瞳で覗き込んで言う。


「これから一緒に勉強しよ?」


 少し首を傾げて上目使いな美少年の甘い笑顔が私に、私だけに向けられる。

 あぁ、この人は…

 狙ってる訳じゃなく天然で可愛い系だ。


(しかも、天然の人たらし…)


 そう思うも、私も先生の手中に納められてしまっていると思った。何か眼が離せなくなるんだ、先生は。


 可愛い笑顔で巧みに人の心に入り込んで。

 そのくせ言ってることは熱くて、どこか頼もしくて。

 そのギャップに惹き込まれてしまう、そんな不思議な魅力の人。


 そのキラキラの笑顔に見惚れる。
 なんだろう、このどうしようもなく先生と一緒にいたいって、ずっと見つめていたいって、そんな、今までに感じたことのない胸が震える気持ちは。


 すると先生は最後に私に尋ねた。


「で、南条?『萌え袖』って何?」


        *
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