星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「やっぱ、なんか夢があるとさ、人って頑張れたり、気持ちが救われたりすると思うんだよ、俺は」


 俺は南条の隣に石垣の上に座る。
 眼の前のグラウンドに熱風が駆けて行く。


「だから俺、南条にも何か

『これは好きだなぁ』とか

『やってみたいなぁ』とか

思えることがあって欲しいと思うんだ」


 蝉時雨が煩い。
 俺は少し声を張った。


「だからさ、俺…

 それを南条と一緒に探したいと思う」


 南条の瞳が大きく見開かれ、その中に梢から射し込んだ陽光が落ちてきらりと揺れた。


「もし南条がどんなことをしてでもやりたいと思えるような大切なものを見付けたのに、ご両親がどうしても認めてくれない。もしそういう時は、俺、一緒に話しに行ってやるよ。

 だからまず一緒に探そう?
 そんな風にやりたくないことから逃げるために無気力になって生きてる、その時間がお前には勿体ないよ」


 南条が俺を真っ直ぐ見ていた。

 夏の陽射しが宙から大地に降り注ぐように、真っ直ぐに向けられる眼。


 あぁ…これだ。
 若々しく穢れのない輝き。
 希望に満ちて真っ直ぐな瞳。


「私でも…見付かるのかな?」

「私でも、じゃない。南条だから見つかるんだ」


 南条の頭にそっと掌を乗せる。

 まるで夜が深まるに連れて空に見える星の数が次第に増えていくときのように、南条の瞳に光が増してゆく。


「ゆっくりでいいんだよ。考える時間も価値があるから。
 無気力でやり過ごす時間より何倍も尊い時間だから」


 南条の瞳に俺が映る。

 きっと、瞳の中の俺の瞳もきっと真っ直ぐに輝いていたと思う。


「南条のために力になりたい。俺に協力させてくれる?」


 君の輝きを守りたい。

 君の瞳が憂いで曇ることのないように俺にできることがあるならば、惜しみ無く手を差し伸べよう。

 君をその淵から救いたい。

 君は俺の希望。

 君は俺の一条の光─
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