星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「眩し…」


 そう言った南条の眼から涙の一しずくがキラリと落ちた。


「南条…?」


 俺は無意識に彼女の頬へ手を伸ばしていた。
 そしてそっと指の背で濡れた頬を拭う。
 フラジャイルな物に触れるように、そっと、そっと…

 南条の瞳から涙が溢れ出す。

 溢れた涙は木漏れ陽を受けておびただしい光の欠片となって散り、彼女のスカートの上に落ちて濡らしていく。


「ごめん」


 南条は黙ったまま首を振った。涙の粒が振り散らされる。


 そして南条は掠れる声でぽつぽつと言った。


「今まで誰も、私の夢なんて、考えてくれたことなかったの。

 私…自身でさえも」


 俺は南条の肩に手を回した。

 華奢な肩。
 こんな華奢な肩にどれだけのものを背負っていただろう。

 南条の涙は更に溢れ、止まらなくなる。
 ひとたび溢れた感情はもはや一人では抱えきれなくなっていた。


「先生…」


 南条が俺の胸の中に崩れ落ちる。
 俺はそれをしっかりと抱き留めた。


 今日は俺が君の神であろう。

 何を差し置いても君を苦しめる全てから君を守ろう。

 君の吐き出した苦しみを全て俺が受け止めよう。


 南条を抱き締めた胸が熱い。

 この熱で君の涙が乾いたらいい。


 俺は南条の背に回した腕に力を込めた。

       *   *   *
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