星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
それから俺は南条のためになればと、中学生向けの職業紹介本を買い与え、自己分析のために市営図書館に誘った。
実際のところ、南条を助けることは俺自身を助けることでもあった。
なぜなら南条は俺の救いだったから。
そしてまた、南条に頼られることが俺がここに存在している価値を確認できる唯一の手立てでもあった。
俺は『南条のため』と言い訳しつつ、もしかすると『俺自身のため』に南条を助けていたのかもしれない。
南条への愛のようであり、ただの馴れ合いのようでもあり、はたまた自己愛のようでもある歪んだ関係だったように思う。
ふたりで図書館に行ったあの日の白い『避暑地のお嬢さんワンピース』は、いかにも高校生の女の子がデートに着そうな雰囲気が俺には新鮮だった。
「彼氏いるの?」
と訊くと、真っ赤な顔で
「いないですよっ!」
と否定する南条は今まで何度となく彼女を見てきた中で最もキュートだった。
ワンピースは例の白檀とベルガモットの香りで、その香りは俺の中で『南条の香り』としてインプットされた。
あの香りが鼻孔をくすぐると、風に翻る白いスカートとキュートな南条の笑顔が今も蘇る─
* * *