星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
冬のはじめの早々に暮れる空。
電車で二駅のいつも乗り換える駅で降り、少し歩く。
授業の始まる15分程前に着くと、教室には既にぱらぱらと生徒が着席していた。
私は真ん中より少し後ろの空いた席を選んで座る。
それからテキストを何となく開いたまま、ぼんやりと教室のドアを出入りする人々を見るともなく眺めていた。
クラスの多くは近隣の県立高校の子達で、私と同じ学校の人はいないようだった。
そのほとんどはいかにも受験生らしい落ち着いた雰囲気の子ばかりで、一人か、せいぜい2、3人の少人数で教室に来て、席で静かにテキストを読んだりしていた。
席が半分ばかり埋まり開始まであと数分ほどという時、
「きゃははははー!」
と女の子の華やかな笑い声と共に教室のドアが開いた。
紺色のブレザー姿の男の子と女の子数人ずつ。
明るい髪色とピアス、女の子達の際どいミニスカートが眼を引く中、取り分け目立つのが先頭に立つ背の高い男の子のアッサムティーのような紅い髪。
「あたしもユウトと一緒のクラスが良かったぁ~」
紅茶色の髪の男の子の腕に絡み付いた女の子が言うと、
「じゃもっと勉強しろよ」
と彼はからかうような口調で返す。
「えー無理ぃ」
「ユウト、帰りまた迎えに来るねー」
「また後でな、ユウト」
華やかな一団は口々に言うと更に先の教室に向かうらしくお喋りしながら廊下を進んで行き、ユウトと呼ばれた紅茶色の髪の男の子だけが残されて教室に入ってきた。
そして彼は教室の後方に向かい、後ろの方でどさりとバッグを置く音がした。
(なんか派手な子もいるんだ)
何となくそんなことを思った時、再びドアが開き、眼鏡を掛けた痩せた男性が入ってきた。先生のようだ。
先生が教壇に立つと少しばかりの雑談をして、直ぐに授業が始まった。