星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「なぁ舞奈」
清瀬くんが私の名前を呼ぶ。
その声に思わずびくっと緊張が走る。
「運命の再会ついでに俺と付き合っちゃわね?」
「!?」
唐突に何を言い出すんだろう!
悪い冗談?何にせよそんなの受け入れるわけない。
だって私は
(先生のこと、好きなんだから…)
私はくるくると首を振る。
「なんで?彼氏いんの?」
私はもう一度、今度は小さく首を振った。
「じゃあいいじゃん」
「無理。清瀬くんこそ彼女いるでしょ!」
「俺?いねぇよ?」
「さっきの子は?」
「あー、あれ友達。彼女とは一昨日別れたし」
「一昨日…」
「いいじゃん。
1週間でいい。1週間お試し。よくあんじゃん?会員登録とかで」
「お試しって…」
「ん?俺いつも告ってくる子とそうしてるけど?試せてお得じゃん?な、いいだろ?」
「…無理」
清瀬くんは私の肩を放すと今度は腕を取る。
「やめて」
「どうせ同じ方に帰んじゃん」
「…分かったから。一緒に帰るからその手はやめて」
清瀬くんは私から手を放した。
それから微妙な距離を取りながらふたり駅に向かって歩き出す。
電車に乗り、自宅最寄りの駅で降りるまで清瀬くんも私もそれ以上話すことなく押し黙っていた。
改札を抜けて私はようやく口を開く。
「ここまででいいから。そんな遠くないし」
「どうせ俺んちお前んちの向こう」
「……」
結局また清瀬くんの隣を歩く。
私は落ち着かない気持ちで清瀬くんをちらりと見上げた。
街灯が清瀬くんの瞳と明るい髪を照らして煌めかせている。
それは存外に綺麗で、きっと学校でも女の子に人気があるだろうな、と思った。