星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
『先生私のこと…
好きですか…?』
『当たり前だろ。
教え子好きじゃない教師とかダメでしょ?』
『そっか。良かった』
言ってしまった言葉に後悔した。
教師としては優等生の応え。
でもそれは俺の本意じゃない。
分かってる。
今の俺に本当の気持ちは言えない。言える立場じゃない。
でも、一縷の望みでもあるのなら…
『あのさ、実は帰りにちょっと話したいことあるんだ』
適当な口実で君を準備室に呼び出して、そう言った。
何て言おうかなんてはっきりしたものもなかった。気持ちだけが先走ってた。
でももしもできることなら。
君がこの想いに気付いてくれているなら、万が一にも少しでも俺のことを意識してくれるなら…
『卒業まで待っててくれないか?』
君と俺の関係が『教師と生徒』でなくなった時には、真っ直ぐな気持ちを君に伝えるから。
いや、きっと伝えずにはいられないだろうから。
それまで待っててくれないか、ただそう思った。
たった一言の言葉が口に出来ないポジションでそんなことを言うのは正しくないと分かっていたけれど、だけどそれだけに、俺にしてみれば大きな決意─例えば今あるものを全部失っても構わないから君が欲しい、というような─だったつもりだ。