星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「昴、何よその顔?」
「…何でもねぇよ」
南条のことも、もやもやと燻る気持ちが顔に出てしまってることも、更にそれを夜璃子に指摘されたことも面白くなくて、ふて腐れた物言いで返す。
「ふぅん」
「何だよ?」
「好きなんだ?あの子のこと」
「なっ…!」
(南条は生徒!南条は妹!!)
胸の内で呪文のように繰り返す。
「なわけねぇよ!言ったろ、南条は妹だから」
夜璃子がじっと俺を見る。
不審に見えた?俺はなんとなく居ずまいを正す。
夜璃子は見透かすように俺を見つめた後、ゆっくりと口を開く。
「舞奈ちゃんてどんな子なの?」
「え?」
夜璃子の言葉に南条の澄んだ瞳が頭を過る。
『先生!』と俺を呼ぶ透き通った声とストレートの黒髪を揺らして振り返るきらきらした微笑みが胸を埋める。
「…真面目で…勉強熱心で…優秀で…」
「……」
ぽつりぽつりと話し出す俺の言葉を夜璃子が黙って聞いている。
「それから…思慮深いところがあるって言うか…人のことよく見てたり、気に掛けたり…優しいところもあるし…
素直で可愛いし…そのくせ強がり言って甘え下手で寂しがりやで…
でも俺には頼ってくれたり…天然なお嬢様かと思いきや小悪魔だったり…
…そんな女の子」
「ふぅん…で?」
一通り聞いた夜璃子が問う。
「で、好きなの?」
「だから!アイツは生徒で!妹みたいなもんで!!」
「そうやって自分をも誤魔化してんだ?」
「!」
「私アンタとどんだけ付き合ってると思う?女の子のことそんな誉め方したことないアンタがそこまで言うとか、ベタ惚れ確定でしょ」
「……」
南条に惚れてるとか…
自分でも気付かないようにしてきた気持ちを夜璃子は簡単に口にしてしまうと、冷めたソイラテに口を付けた。