星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「それにしてもまぁ…私が知ってる限りでだけど、昴が女の子に本気になってるの初めて見たわ」
「いや、そんなことは…」
「え、じゃああの頃付き合ってた子で本気で付き合ってた子一人でもいた?
て言うかそもそも何人いたの?彼女」
「え…と…」
そう言われて思わず指を折り、更に開いて数えてしまう。
それを呆れ顔で見ている夜璃子が続ける。
「しかもどうせ海外に住んでた頃はブロンド美女と付き合ってたんでしょうよ」
「いやさすがにブロンドは…
……」
否定しかけて言い淀む俺に夜璃子は
「昴、チャラ過ぎ」
と言い放った。
「面目ない…」
なんで俺、夜璃子に謝ってるんだろう…?
「でもなぁ!俺だって別にいい加減な気持ちで付き合ってたわけじゃない」
そう。
一度だっていい加減な気持ちで付き合ってたわけじゃない。
俺にはそれまで特別な感情を抱くような女の子がいたことがなかった。だから、ただ単純に俺を好きだと言ってくれる女の子に応えてあげたいと思った。
それで俺もその子を好きになれればお互いにとってベストだと思った。
俺はその時その時の彼女に尽くしてきたつもりだし、本気で好きになろうと努力してきたつもりだった。
けど。
それはどれも実を結ばなかった、というだけで。
しかし結果として、片手に収まらない数の恋愛をしてきたつもりだったけれど、今となってはそもそもそれらは『恋愛』だったと言えるかどうかさえも疑わしい。
だって俺は今まで一度たりとも女の子に恋愛感情を感じたことがなかったんだから。
だけど南条は─
南条はその誰とも違った。
夜璃子の言うようにそれは『初恋』なんだろう。
彼女を想うと今までに感じたことのない感情が込み上げる。
それは幸福でありながらどこか苦く切なく、甘く胸を締め付ける、言い得ぬ感情。
君に触れたい、ともすれば抱き締めたい、という孤独で身勝手で、それでいて心地好い感情。
きっとこれが『愛おしさ』なんだろう、と俺は彼女と出逢って初めて知った。
それでも、彼女と俺が『教師と生徒』である限りそれは許されぬ想いなのはよく分かっている。
自分で自分を騙し、誤魔化してきた想いだった。
決して彼女には言えない、隠し通そうと思った想いだった。
それでも想いを振り切って彼女から離れることが出来なくて、常に理性という防波堤を高く高く築いて、そうまでしても彼女の傍にいたかった─