星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「これからどうするの?」

「どうもこうも…教師として見守ることしか出来ないからな、俺は」

「…そうね。でも…昴、それで良いの?」

「…良いとか良くないとかじゃないだろ」

「優等生過ぎて悔しいわね」

「どういう意味だよ」

「例えば…ねぇ、見守るしか出来なくても、でも少しでもあの子の心の中に昴のこと焼き付けるとか、してもいいんじゃない?
 あの子が卒業する時には『ただの妹』でいたくないんでしょ」

「……」


 俺のことだけ見てて欲しい、なんて、そんなことは言えないけど…

 でもせめて、教師としてだけじゃなくて、俺のこと少しでも男として見て欲しい。


『好きだ』なんて、とても言えないけど…

 でも、俺の気持ちに気付いて欲しい─


 そんなことを思ってしまうのは、エゴイズムじゃないのかな…


「教師だからって好きなものを好きだと思っちゃいけない、ってことないでしょ?誰も心の中に想うことを咎めることは出来ないわよ。
 そしてそれを表現することは許されなくても、溢れ出てしまう想いは止められないもの」

「…うん」


 夜璃子に指摘されたのは癪に触るけれど、今日は夜璃子の言葉が酷く心に染みて…


 でも。

 夜璃子の言葉に甘えて、溢れる想いをそのままに、あわよくばその想いが南条に伝わってしまえば…

 ともすると、逆に自分の立場を利用しても南条を振り向かせようすることも出来る、なんて…


 ぼんやりとそんな邪なことが過ってしまう、最低な俺もそこには確実に存在していたんだと思う。

       *   *   *
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