星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「曲は舞奈が決めていーよ」
私は自分が歌い慣れた曲を選ぶ。
「絶対負けないんだからね!」
「だから傷付くっての」
画面に流れてくる音符を一心に見つめる。
ついついボタンを押す手に力が入る。
バンバンとボタンを叩く私に清瀬くんが言った。
「舞奈怖ぇえ」
「あ、ごめん」
「でも可愛い」
「!
余計なこと言わないでっ!間違っちゃう!」
「間違っていいよ」
「嫌、絶対」
「お前さりげなく酷いよね。そんなとこも好きだけど」
「もー!黙ってて!」
「はいはい」
その後も私はボタンをバンバン叩き、そして曲が終わった。
画面が切り替わり得点が出る。
「嘘…」
「よっしゃ!」
僅かな差で清瀬くんが勝った。
(えぇ…どうしよう…)
清瀬くんの様子を上目遣いに窺い見ると、清瀬くんは私ににっこり笑い掛ける。
「約束だかんな。後で楽しみにしてて」
うわぁ…もう緊張で息が詰まりそうだよ…
項垂れる私の頭を清瀬くんがこつんと叩く。
「そんな顔すんな。マジ傷付くから」
「…ごめん。」
「じゃあ良い顔して?プリ撮るから」
清瀬くんはまた私の手を取り店内を歩く。
(あ!)
途中、私が『あるもの』に眼を惹かれた。
「好きなの?」
気付いた清瀬くんが訊ねる。
「うん」
それは最近好きなくまちゃんのキャラクター。
クレーンゲームの中のキーチェーンのくまちゃんと眼が合ってしまった。
「あの可愛い顔でふてぶてしい態度が良いよな、あのくま」
「うん。でもなかなかくまちゃんのグッズ売ってるとこないんだよね」
そう言うと、清瀬くんの足が止まった。
「欲しい?」
「え?」
「あの辺のなら2回あれば取れるよ」
ケースの中を覗き込んで清瀬くんが言う。
「えっ!ホント?」
「うん。待ってて」