星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
(何で追ってくるの─?)
放っておいてくれればいいのに。
そうやって私のことを気にしたりするから、無駄に私を期待させて、苦しめるのに…
ブーツの靴音を響かせて通りを走る。
居酒屋の前に大勢で集まっている大学生くらいの団体の中に飛び込んだ。
人と人の間を潜り抜け、そのまま隣のドラッグストアに駆け込んで別のドアから外に抜ける。
駅前の雑踏の中で振り返ると、もう先生の姿は見えなかった。
「はぁ…はぁ…」
ゆっくりと足を緩め、上がった心拍と呼吸をクールダウンさせるように電飾に明るく浮き上がらされた街の中を一人とぼとぼと歩く。
(先生…)
本当は先生に逢いたい。
傍にいたい。
でも逢えば逢うほど好きな気持ちがどんどん大きくなってしまうから…
駅に続くペデストリアンデッキに上り、下を走る車のライトが光の川のように流れていくのをぼんやりと眺める。
(もう先生は…きっと来ない)
こんな沢山の人で溢れた街の中で、一度見失った私を探し出してまで追う価値はない。
でも。
自分から逃げたはずなのにその事実を噛み締めると酷く胸が痛むのを感じた。
デッキから見下ろす街は人、人、人。
煌々と灯る店の灯りとネオン。
車のヘッドライトとテールランプの波。
こんな小さな街でもはぐれたら簡単には出逢えない。
ましてや逃げてきてしまったのだから…