星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 翌日は月曜日で、中間試験初日だった。

 私は2教科の試験を終え、教室を出た。
 少し開いた三階の廊下の窓からは晴れてはいても凛とした冷たい空気が流れ込む。


「初原せんせーッ!」


(!!)


 不意に窓の外から聞こえた中学生の黄色い声に心臓が跳び上がる。


「せんせー!質問、質問!!」

「え、何?」


(うゎゎゎ…)

 今度は先生の声に心臓が早鐘を打つ。


「ねぇせんせー、彼女いるのー?」


(えぇっ!)


「またその質問かよ。ったく、早く帰って明日の試験の勉強でもしろ!」

「えー、だっていっつもはぐらかされて答えてもらってないもん」


(いっつも聞かれて、いっつもはぐらかしてるんだ…)


 いつしか窓際に足を止めて聞き耳を立ててしまっていた。


「あー…分かった」

 先生がそう言って、咳払いを一つするのが聞こえた。


(分かった、って…?)


 私が首を傾げるのと同時に、

「えーっ!!」

「キャー!!」

っと中学生達の悲鳴が上がった。

 思わず窓から階下を覗き込む。


「せんせー彼女いるんだぁ!」

「えー!やだーっ!」

 中学生が身悶えしている。


(えっと…その『彼女』って…それってもしかして…

 うゎゎゎ!!)
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