星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 シュー…パァン!!


 私が予告もなしに花火のひとつに点火すると、その音に皆が空を見上げる。

 それを合図に私と先生は眼を見合せ、頷き合った。
 花火に次々と火を灯す。


 目映い光たちが吹き上がる。
 一度吹き上がった色とりどりの光たちが、今度は煌めきながら地上に滝のように降り注ぐ。
 その真上の夜空には更に光の花が開く。


 私はその光のパレードを見上げることなく黙々と火を点けていく。

 残り2本。

 ライターを花火に捧げたところで、


「熱っ!」


 手の甲に火の粉が跳ねた。


「大丈夫か!?」

 先生の声がすかさず飛んできた。


 かなり痛い。

 けれども、

「平気!とにかく終わらす!」


 痛む手で残りの花火に急いで火を点け、私はライターを置く。

 見ると右手の甲がやはり火傷していて、思ったより大きく赤くなっていた。

 左掌でぎゅっと抑える。


 同時に同じく火を付け終えた先生が


「南条!」


と駆け寄り、私の両手を取った。


(え…?)


 どきん…


「どこだ!?」


 思いのほか大きな先生の掌は、私のそれを包んでしまう。

 熱い掌で私の手を握り、火傷を探す先生。

 思いがけないことに、痛みも忘れ胸が高鳴ってしまう。


「あ!これか」


 右手を握られたまま私は先生の顔をちらっと見た。


 鮮やかな光のシャワーに映し出されて、心惹かれている人に手を握られている、なんて、信じられないシチュエーション。
 その指から掌から伝わってくる熱が私の頬や胸を沸騰させる。


 先生が光の映り込んだ綺麗な眼で私を見る。


(綺麗…)


「これ、冷やした方がいいな。来い」


 そう言って先生は私の手を引く。


 先生に繋がれた手が瞬く光を浴びて輝いている。

 触れたところに全部の触覚が集中する。

 私はまるで夢の中をふわふわ歩いているような気持ちだった。
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