星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 それから私たちはイルミネーションの一番の見所、光のトンネルに向かった。

 歩きながら先生は時々指環を確認するように私の左手に触れる。
 しっかり繋ぐでもなくゆるゆると触れ合う指と指に、なんだか胸の中がそわそわ擽られるような感覚がする。


 数百メートルある光のトンネルは、その全天をぎっしりと夥しい数の小さな灯りが埋め尽くしていた。
 目映いばかりに煌めくそれはまさに星々で、銀河の中を漂っているようだと思った。


「星が降ってくるみたいだな」


 隣で先生が言った。


「うん…私もそう思った」

「そう?俺たち気が合うな」


 顔を見合わせて「ふふっ」と笑い合う。


「本物の空は今日は生憎曇ってるけど、これならいつでも見られていいね」

「うん」

「でも…いつかは本物がこんな風に星でいっぱいの所、見に行こうか?ふたりで」

「え…?」

「ずっと傍にいる、って言ったろ?
 色々綺麗なものとか面白いものとか、一緒に見に行こう?南条の喜ぶ顔見たいし」

「…ん」


 嬉しい言葉に照れてしまって、先生の香りを見られなくて俯いた。

 先生はそんな私の指にまたそっと触れた。


 トンネルから出て、プリズムのように色とりどりに揺らめく水辺を歩いていたとき、ぽつんと鼻先に冷たいものを感じた。

 冷たい粒はひとつ、またひとつと頬へ手の甲へと落ち、次第にその数が増してゆく。


「雨、降ってきたな」


 先生が暗い空を見上げて言った。


「もう大分いい時間になったし、帰ろうか」


 ホントはもっと一緒にいたい…


 頷きかねている私に先生が囁く。


「車の中なら濡れないし、それにふたりになれるでしょ?」

「!」


 頬を紅くした私に先生は

「南条可愛い」

少し意地悪な微笑みで言った。

           *
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