星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
「この奥が庭園になってるみたいだよ」
拝殿の階段を下りながら先生が言った。
「行ってみる?」
「うん」
拝殿の脇から裏に回ると、小さいけれど良く手入れされた庭園があった。
「わぁ…綺麗」
早咲きの紅梅が花をたわわに付け、今が盛りとばかりに咲き誇る。梅の木の真下に立って見上げると、真っ青な早春の空に紅い花のコントラストが眩しいほど鮮やか。
「花の香りがする」
私は隣に立つ先生のコートの肘の辺りをそっと摘まんで眼を閉じた。
胸いっぱいに凛と澄んだ空気を吸い込む。空を仰ぐと瞼の裏がほんのり明るく光る。
幽かな春の香り、春の陽射し─
春の感覚に魅了されていると、閉じた瞳がふと翳った。
(え…?)
と思うと同時に…
ちゅ、と唇に何かが触れる。
びっくりして眼を開けると、眼の前には先生の端正な顔。
「え…!あ…」
固まる私に先生が微笑む。
(キ…キスされちゃった…!)
「こんなとこで…ダメだよ」
「誰も見てないよ」
見回すと、庭園にいくらか人はいるものの皆紅梅に眼を向けていてこちらを気に留める人はいなそうだ。
「でも外だし…恥ずかしいよ」
俯く私の頬を先生は人差し指の背で撫でる。そして、
「じゃあ今度はふたりきりの時にね」
「!!」
なんて、私を更に照れさせる。
くすっと笑う先生の微笑みがちょっと意地悪でそれに色っぽくて、私のドキドキは止まらなくなっちゃうんだ。
* * *