星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」
 冬休みが終わる直前の日曜日。


「はい!先生質問!」

「どれどれ?」


 私は先生の家にいた。


「あのね、これ、2問目のとこ」

 先生のデスクを借りて勉強している私の後ろから先生がテキストを覗き込む。


「あー、これ」

 先生の腕が伸びて背中側から覆い被さるようにデスクの上のシャーペンを取る。
 一瞬吐息が髪にかかり、胸がとくんと鳴る。


「基本的には前の文章の意味がちゃんと分かってればthisがどこを指してれば分かるってやつね。だから…」


 先生がテキストに書き込む度に肩に背中に先生が触れる。


(集中しなくちゃダメ!)

 分かってるのに、直ぐ近くに聞こえる先生の声や感じる気配にばかり意識がいってしまう。


「…となるから答えはこれ」

 下線をしゃっと引くと先生がペンを置いた。


「って、南条聞いてる?」

「えっ!う、うん、聞いてるよ」

「いや、聞いてないな」


 先生は私の耳元に口を寄せて言うと、


「!」


やにわに背中から抱き締めた。


「南条頑張ってるから、ちょっと休憩しようか」


 先生の腕にぎゅっと力がこもり、心地好い圧力に意識がふわっと遠退きそうになる。

 髪に頬を寄せる先生の吐息が少し開いたニットの首筋にかかって、鼓動が高まっていく。


「南条…」


 先生が私の頬に唇を寄せた。


(先生…)
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