星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」


「!……」


 スマホを持つ手がひどく震えた。


(なんで、先生…?)


「やっぱり俺教師だからさ、南条と付き合うの、無理なんだよ」


 私の声にならなかった問いに答えるみたいに先生が言う。


「私…もうすぐ卒業するよ?先生の生徒じゃなくなるんだよ?」


「…ごめんな」


「!!」


『この石にはね、『永遠の誓い』って意味があるらしい。

 南条、俺はね、春になったらお前を迎えに行くし、その後もずっと傍にいるよ。
 南条さえ良ければ、永遠に離すつもりないんだ。約束するよ。

 だから、どうか俺を信じて、不安にならないでいて?』─


 青の光に包まれる庭園でクリスマスイブの晩、先生はそう言った。


(ねぇ、あれは嘘だったの…?)


「…先生

 私のこと、嫌いになった…?」


「……

 …受験、頑張って。それじゃ俺、明日仕事だから」


「先生…ッ!」


「お休み」


 電話が切れ、ツーツーと無機質な音を立てる。

 手からスマホが滑り落ちた。


(なんで…なんで先生…?)


 ただ呆然とその場に座り込む。突然告げられた離別に頭が着いていかなくて、悲しいはずなのに涙も出てこない。


(ずっと傍にいるって言ったじゃない…)


『南条を不安にしないし、俺も不安に思わない。

 約束』


 ふたりで約束のキスをしたよね?

 それなのに…


(先生…私のこと嫌いになっちゃったの…?)


 なんで?急に?それとも本当は急ではなくて、私が先生を想っているほど先生は私のこと好きじゃなかったんだろうか…?


 でも、嫌われても私はきっと先生のこと忘れることできないよ…


 私は毛布を頭まで被り、膝を抱えた。毛布のほんのりとしたあったかさと柔らかさだけが私を慰める。
 思い出すのは頬に触れる先生の掌の優しい感触。


(先生…)


 膝に顔を埋め、眼を閉じる。瞼の裏に想い巡る先生の顔、先生と過ごした時間のたくさんの想い出─


(先生が私を嫌いになっても…私は先生が好きだよ…)


 強く強く思う。どんなにか先生が好きだと。
 どんなにかこの先も先生を愛してしまうだろうと─
  

 そして、ようやく私の頬に一筋の涙が伝った。

        *   *   *
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