星降る夜はその腕の中で─「先生…私のこと、好きですか?」

「卒業証書授与。3年1組、起立」

 厳かな講堂に一斉に靴音がして皆が立ち上がる。
 それから、一人一人順に名前を呼ばれては壇上に上がり、証書を受け取っていく。


「南条舞奈」

「はい」


 壇上を中央の机の前に進み、校長先生から証書を手渡され深く一礼した。それから背後にある舞台から下りる階段に向かってゆっくりと客席に向き直った。

 直ぐに職員席の一番端に先生の姿を見つける。


(先生…)


 いつか先生が言ってた。

『これから大人になってゆく姿をこれから先、遠い未来もずっと傍で見てられるわけじゃないだろ?俺はそんなの嫌だから』─


 ねぇ、今貴方の傍で、私は貴方に私の未来を見せられているかな?
 ゆっくりとだけど貴方に近付けているのかな?


 先生が私が最初に好きになったあのきらきらの笑顔で微笑む。


 先生待っててね。

 あぁきっと、春は直ぐそこ─

        *   *   *
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